佐々木俊尚著 「電子書籍の衝撃」

先日、Japan FM NetworkPodcast梶原しげるの『TALK TO TALK』で、佐々木氏の対談を聴き、それがきっかけでこの本を読みました。

佐々木俊尚著 「電子書籍の衝撃」  本はいかに崩壊し、いかに復活するか?
ディスカバー・トゥエンティワン


内容は、今話題のキンドルiPAD等の電子書籍について本です。キンドルiPAD等についての説明から始まり、AmazoniTunes等の“電子プラット・フォーム戦争”の解説が続きます。ここまでなら、普通のテクノロジー解説の本や雑誌でもよく見受けられる内容ですが、これ以降が、佐々木氏ならではの力の入った記述となります。“セルフパブリッシングの時代へ”、“日本の出版文化はなぜダメになったのか”と続き、最終章で“本の未来”が語られます。

この本は、アナログ情報としての書籍が、デジタル空間に入ってくる時に起こるさまざまな変化について解説し未来予測したの本といえます。“日本の出版文化がなぜダメになったのか”というような問題は、当然日本だけにしかあてはまらないことですが、「アンビエント」化やマイクロインフルエンサー等の考えは、デジタル空間で起こることですから、どこの国でも当てはまるグローバルなテーマです。

後半部分の話の流れを自分の整理のために、重要な文、タイトルを抜粋しました。こんな感じです。

  • 電子ブックによって、本は「アンビエント」化する。
  • そしてアンビエント化された本の世界の中では、古い既刊本も新刊も、あるいはアマチュアの書いた本もプロの書いた本も、すべてがフラットになってきます。
  • そして、情報のマイクロコンテンツ化へ
  • ただし、本は、音楽と違ってマイクロコンテンツ化しにくい構造をもっている。
  • 本に与える最大の影響は、マイクロ化ではなく、リパッケージ ――― つまりいまあるパッケージを剥ぎ取られて、別のかたちに再パッケージされるということです。
  • リパッケージは、コンテキストの流れる圏域までミニマル(最小)化される。そして、このようなミニマル化した情報圏域は、いまや日本の社会にも大きく広がっています。それがソーシャルネットワークです。
  • マスモデルに基づいた情報流路から、ソーシャルメディアが生み出すマイクロインフルエンサー


全体を通じて、音楽業界に起こった変化についての説明がなされています。特に、まつゆきあゆむ、というミュージシャンの例が“セルフディストリビューションに挑むまつゆきあゆむさん”というように何度か音楽業界での具体例として紹介されています。


その他、印象に残ったのは、日本の出版文化がダメになった理由として、日本の再販制度が取り上げられているところです。

ちょっと内容を紹介すると。。。。

  • アメリカやヨーロッパでは、本の流通と雑誌の流通が別になっているのに対して、日本では1つに統合されている。
  • 重要なことは、アメリカやヨーロッパでは、本は書店が買い取る方式であるのに対して、日本では出版社が取次店を通して書店に販売を委託する委託制になっている。つまり、書店は本が売れなければ返本できる。
  • そして、この制度は、単に本の動きだけでなく、お金の動きも伴っている。つまり、出版社としては、本が返本されると、同時に売上も減ることなる。
  • その減った売上を穴埋めにするために、新たに別の本を書店に送りつける。そして、これを繰り返す。つまり自転車操業ということになる。

これは、ビジネスとして悪循環に陥っているということです。すべての出版社や書店がこのような状況ではないと信じたいですが、もしこのような状況に近い状態であるなら、デジタル世界への移行は、大変苦しいものと感じます。

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

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